抗コリン薬の副作用を徹底解剖!認知症リスクと高齢者を守る注意点
抗コリン薬の副作用を徹底解剖!認知症リスクと高齢者を守る注意点に関する専門家の意見を分かりやすく解説いたします。
抗コリン薬の処方・服用において、添付文書上で厳格に禁忌(使用してはならない)と指定されている代表的な疾患が「閉塞隅角緑内障」と「重度の前立腺肥大症」です。病態の機序を理解しないまま漫然と服用を続けると、救急救命の処置を要する事態に発展します。
眼球内では、房水と呼ばれる液体が循環することで一定の眼圧が保たれています。抗コリン薬が作用すると瞳孔を開く筋肉(瞳孔散大筋)が弛緩し、散瞳状態が生じます。この際、角膜と虹彩の間にある隅角(房水の排出口)が狭い構造を持つ閉塞隅角緑内障の患者が抗コリン薬を服用すると、隅角が完全に塞がり、房水が逃げ場を失って眼圧が急上昇します。これが「急性緑内障発作」であり、激しい眼痛、頭痛、嘔吐を伴い、発症から数日以内に適切な処置を行わなければ不可逆的な失明に至ります。
一方、男性特有のリスクとして警戒すべきなのが前立腺肥大症に伴う排尿障害です。アセチルコリンは膀胱の筋肉を収縮させて尿を押し出し、同時に膀胱の出口を緩めるシグナルを出しています。抗コリン薬によってこのシグナルが断たれると、膀胱の収縮力が失われる一方で出口が固く閉ざされます。前立腺が肥大して尿道が元々圧迫されている状態にこの作用が加わると、膀胱に大量の尿が溜まっているにもかかわらず一滴も自力で出せなくなる「完全尿閉」を引き起こします。下腹部の激痛とともにカテーテルによる緊急導尿が必要となり、腎機能不全を併発する危険性さえ孕んでいます。