タブーを美へ昇華させた革命児・竹宮惠子が切り拓く表現の真髄
話題沸騰中の タブーを美へ昇華させた革命児・竹宮惠子が切り拓く表現の真髄について、詳しいまとめを分かりやすく掲載しています。
1976年に発表された『風と木の詩』は、漫画界におけるひとつの臨界点だった。19世紀末のフランスの寄宿学校を舞台に、美少年ジルベールとセルジュが織りなす愛憎のドラマ。少年愛という当時の商業誌では考えられなかったテーマを真正面から描き出すため、彼女は実に9年もの歳月を構想と準備に費やした。
編集部からの抵抗は凄まじかった。あまりに過激で前衛的すぎる題材に対し、「少女漫画に少年同士の性愛を描くなど時期尚早だ」という猛反対が巻き起こった。だが、彼女は一歩も引かなかった。読者を納得させる圧倒的な画力と物語構成力を証明するため、あらかじめエンターテインメント作品で確固たる人気を確立し、自らの発言権を勝ち取っていったのだ。緻密に計算された戦略の末、ようやく世に出た第一話は、読者層のみならず批評界にも巨大な衝撃波をもたらした。
特筆すべきは、性や愛の葛藤を扇情的に消費させず、存在の根源的な孤独を描き出すための「詩」へと昇華させた表現技法にある。重ねられたスクリーントーンの陰影、登場人物の息遣いを可視化するコマの連続。タブーを破ること自体が目的ではなく、人間の尊厳を描き切るためにタブーを越えた。その覚悟こそが、本作を不朽の名作たらしめている。