ムスクの香りとはどんな匂い?石鹸の清潔感と色気の正体を徹底解説
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現代のクリーンなイメージとは裏腹に、ムスクの起源は極めて生々しい動物性の分泌物でした。かつて天然香料として珍重された「麝香(じゃこう)」は、ヒマラヤやチベットなどの高山地帯に生息する小型の哺乳類「ジャコウジカ」の雄から採取されていました。
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雄のジャコウジカは発情期になると、下腹部にある「香嚢(じゃこうのう)」と呼ばれる腺器官から強烈なフェロモン様物質を分泌します。これを取り出して乾燥させたものが麝香です。原体そのものは鼻を突くアンモニア臭や強烈なアニマル臭を放ちますが、これをエタノールで極限まで希釈・熟成させると、信じられないほど甘美で温かい芳香へと変貌します。古代エジプトのクレオパトラやフランスのナポレオン妃ジョゼフィーヌも愛用したと記録され、日本でも奈良時代の正倉院宝物に収蔵されるなど、金と同等以上の価値で取引されてきました。
しかし、分泌物の採取にはジャコウジカの命を奪う必要があったため、20世紀に入ると乱獲により個体数が激減しました。この事態を受け、1973年に採択されたワシントン条約(CITES)によってジャコウジカの商業国際取引は全面禁止となりました。
これにより、香料業界は大きな転換点を迎えます。有機化学の進歩により、麝香の主成分である「ムスコン」をはじめとする芳香分子の人工合成に成功。現代のフレグランス市場で流通しているムスクは、すべて生体採取を一切行わない100%の合成ムスクとなっています。