モチモチの木はなぜ怖い?トラウマの理由と大人を惹きつける真実

モチモチの木はなぜ怖い?トラウマの理由と大人を惹きつける真実に関する疑問や疑問点をわかりやすくまとめました。詳細を読もうことができます。

『モチモチの木』を手にした読者が最初に直面する最大のハードルは、間違いなく絵本作家・木版画家の滝平二郎が手掛けた挿絵の圧倒的な視覚的圧力です。とくに絵本の表紙を飾る主人公・豆太の表情は、一般的な児童文学の温和なタッチとは一線を画しています。見開かれた大きな瞳、引き結ばれた口元、そして背景を覆い尽くす漆黒の闇――そこには、夜の静けさに怯え、息を潜める少年の剥き出しの緊張感が宿っています。

滝平二郎の代名詞である木版画と切り絵を融合させた技法は、木版の力強い輪郭線と、切り抜かれた紙の鋭利なエッジが同居しています。明度差が極端に高いハイコントラストな画面構成は、光が当たらない部分を「完全な黒」として塗り込めます。幼少期の人間の脳は、暗闇の輪郭が定まらない部分に自身の恐怖心を投影する傾向がありますが、滝平の切り絵はその余白に「得体の知れない何かが潜んでいる気配」を克明に幻視させる力を持っていました。

さらに、豆太が夜中に恐れおののく巨木「トチの木」の描写は、単なる樹木を超えて、まるで夜空を掴み取ろうとする巨大な手や怪物のように描かれています。昼間は甘くておいしい実を落としてくれる親しみ深い木が、夜になると腕を振り上げる化け物へと豹変する。この視覚的な落差が、小学校低学年の子どもたちの日常感覚を激しく揺さぶり、忘れがたい恐怖の記憶として刷り込まれました。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest