鈴虫の鳴き声はなぜ電話で聞こえない?高周波がもたらす癒しの謎
鈴虫の鳴き声はなぜ電話で聞こえない?高周波がもたらす癒しの謎の真相について、専門知識を取りまとめてご紹介します。
「秋の夜長に、実家で鳴いている虫の音を携帯電話で家族に聴かせようとしたのに、まったく聞こえないと言われた」――そんな経験を持つ人は少なくないはずだ。受話器の不具合でも、電波障害でもない。実はこれ、音声通話システムの設計に由来する物理的な理由が存在する。
音響工学の知見によれば、一般的な携帯電話や固定電話の音声コーデックは、人間の話し声を効率よく伝送するために帯域が制限されている。具体的には約300Hzから3400Hz(広帯域通話でも7000Hz程度)の周波数帯に圧縮される仕組みだ。これに対して、鈴虫が左右の羽を高速でこすり合わせて発生させる音の周波数は約4500Hz(4.5kHz)という非常に高い帯域に位置している。
つまり、人間の声には聞こえても、通話フィルターの「枠外」として処理されてカットされてしまうのだ。どれほど力強く羽を振動させていても、通信技術のアルゴリズムによってノイズ判定、あるいはカット対象となって消し去られてしまう。何とも皮肉で興味深い科学のイタズラと言えるだろう。