解離性同一性障害の真実|多重人格の記憶喪失と交代人格の正体

解離性同一性障害の真実|多重人格の記憶喪失と交代人格の正体に関する専門家の意見を丁寧に解説いたします。

解離性同一性障害は、遺伝子だけで発症する病気ではありません。発症の決定的な引き金となるのは、幼少期(主に9歳未満)における慢性的一貫した過酷な逆境体験です。発達心理学において、小児は本来、成長に伴って様々な自己の感情や体験を一つの一貫したアイデンティティ(統合された自我)へと束ねていきます。しかし、自我が完成する前の極めて脆弱な時期に、逃げ場のない家庭環境で凄惨な身体的虐待、性的虐待、あるいは極限のネグレクトを受け続けると、脳は破滅的な精神崩壊を回避するため、「この地獄を味わっているのは私ではない、別の子だ」と認識を分断する最終防衛システムを発動させます。

これが、人格が統合されないまま成長を遂げてしまう発症のメカニズムです。米国精神医学会のDSM-5診断基準では、確定診断のために以下の厳格な要件が定められています。

  1. 2つまたはそれ以上の明確に区別される人格状態(交代人格)の存在。これには自己同一性および主体感の著しい不連続性が伴う。
  2. 毎日の出来事、重要な個人情報、トラウマ的出来事の想起において、通常の物忘れでは説明できない反復的な空白(解離性健忘)が存在する。
  3. これらの症状が、臨床的に重大な苦痛、または社会的、職業的、その他の重要な機能分野における障害を引き起こしている。
  4. その障害は、広く受け入れられている文化的または宗教的実践の正常な一部ではない。
  5. その症状は、物質(乱用薬物や医薬品による意識消失など)の生理学的作用、または他の身体疾患によるものではない。

ネット上には「自分も多重人格かもしれない」と不安を抱く人々向けに、解離体験尺度(DES: Dissociative Experiences Scale)などのセルフチェック指標が出回っています。「気がついたら別の場所にいたことがある」「鏡を見たときに自分だと認識できない瞬間がある」といった設問に答えるものですが、自己採点による判断は極めて危険です。重度の抑うつや解離性健忘、複雑性PTSDでも同様のスコアが高く出ることがあり、正式な識別にはトラウマ治療の専門医による数ヶ月にわたる慎重な構造化面接が不可欠です。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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