『ゲゲゲの女房』原作者・武良布枝の現在|94歳の今と水木家の絆
『ゲゲゲの女房』原作者・武良布枝の現在|94歳の今と水木家の絆の要点や背景を丁寧にまとめました。全体像を一目で把握できます。
武良布枝さんの半生を語る上で欠かせないのが、水木しげる(本名・武良茂)さんとの特異な出会いと、想像を絶する貧困の日々です。島根県安能郡大生村(現在の安来市)の造り酒屋の娘として育った若い頃の布枝さんは、控えめで人見知りの激しい性格でした。
当時としては適齢期を過ぎつつあった29歳の冬、復員後に左腕を失いながら紙芝居・貸本漫画を描いていた10歳年上の武良茂とお見合いをします。驚くべきことに、お見合いから挙式までわずか5日という超スピード婚でした。「片腕がないことなど意に介さず、朗らかで生命力に溢れていた」という第一印象に背中を押され、布枝さんは裸一貫の夫を追って上京を決意します。
しかし、東京・調布での新婚生活は想像を絶する極貧生活でした。当時の貸本漫画界は斜陽産業で、原稿料の不払いや原稿の持ち込み拒絶は日常茶飯事。布枝さんは質屋通いを繰り返し、新聞代も払えない極限状態に追い込まれました。夜中に夫が徹夜で机に向かう背中を見守りながら、自らも削り器で鉛筆を削り、インク壺の準備をし、無言で支え続けたのです。この過酷な時代に培われた「どんなボロ家に住んでも、お父ちゃんと一緒なら何とかなる」という覚悟こそが、のちの世界的巨匠・水木しげるの土台を築き上げました。