マスク増産の舞台裏と現在地|異業種参入の真相と工場のいまを追う

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国内で突如としてマスク増産が猛烈なスピードで進められた最大の理由は、国内流通の約8割を海外(とりわけ中国)からの輸入に依存していた脆弱性が一気に露呈したことにあります。日本衛生材料工業連合会の当時の統計でも、2019年度における国内不織布マスクの供給量は約8割が輸入品であり、国内生産はわずか2割程度に過ぎませんでした。相手国の輸出規制や国際的な獲得競争が激化した瞬間、国内の医療機関や一般市民への供給ルートは完全に寸断されたのです。

この危機的状況を打破すべく、経済産業省が即座に打ち出した切り札が「マスク生産設備導入支援事業費補助金」でした。設備投資費用の最大4分の3を国が補助するという異例の支援策が呼び水となり、クリーン環境と高精度な加工技術を併せ持つ国内メーカーへ白羽の矢が立ちました。

製造業各社が参入を決断した背景には、単なるビジネスチャンスにとどまらない社会的使命感と、自社リソースの有効活用がありました。液晶パネルの製造ライン縮小で高スペックなクリーンルームを保有していた電機メーカー、不織布の原料調達から射出成型までのサプライチェーンを掌握していた生活用品メーカー、さらには精密機械や自動車部品の生産ノウハウを持つ企業が「今こそ自社の技術で社会のインフラを守る」という決断を下したのです。これが、前代未聞と評された異業種参入の真実です。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

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