ファンデルワールス力とは?生じる理由とヤモリが壁を歩ける真相
ファンデルワールス力とは?生じる理由とヤモリが壁を歩ける真相に関する主要な事実を分かりやすくまとめました。詳細な解説をチェックしましょう。
化学の世界において、分子同士の間に働く引力を総称して「分子間力」と呼びますが、その中核を担うのがファンデルワールス力です。最大の特徴は、ヘリウムやアルゴンのような希ガス、あるいはメタンや酸素といった極性を持たない「無極性分子」を含む、あらゆる原子・分子の間に普遍的に働くという点にあります。
プラスとマイナスの電荷がはっきり分かれていない中性の分子同士が、一体なぜ引き合わされるのでしょうか。その核心は、原子核の周囲を高速で運動する電子の「瞬間的な偏り」に隠されています。
分子全体としては電気的に中性であっても、フェムト秒(1000兆分の1秒)レベルの極小時間で見ると、電子雲の分布は常に絶え間なく揺らいでいます。ある瞬間、分子の片側に電子が偏ると、ごくわずかなマイナス極とプラス極が生じます。これを「瞬間双極子」と呼びます。この瞬間的な偏りが隣接する分子の電子を押し戻し、隣の分子にも逆向きの極性を引き起こす(誘起双極子)ことで、プラスとマイナスが引き合う静電気的な引力が発生するのです。これを発見者の物理学者フリッツ・ロンドンにちなんで「ロンドン分散力」と呼びます。
学術的な分類において、広義のファンデルワールス力は以下の3つの相互作用の総和として定義されます。
- 配向力(キーソム相互作用):極性分子同士が持つ永久双極子が、互いの正負を向かい合わせて引き合う力。
- 誘起力(デバイ相互作用):永久双極子が無極性分子の電子雲を歪ませ、引き寄せる力。
- 分散力(ロンドン分散力):電子の揺らぎによってすべての分子間に生じる力。極性のない分子間ではこの力のみが働く。
また、分子同士はどこまでも無限に近づけるわけではありません。原子同士が過度に接近すると、外側の電子雲同士が反発し合う「パウリの排他原理」による斥力が急激に立ち上がります。この引力と斥力が釣り合う限界の距離を定義したものがファンデルワールス半径であり、分子の立体的な大きさや形状を決める決定的な物理定数となっています。