大吟醸と純米大吟醸の違いとは?味と価格の真相や格付けの誤解を徹底解明
大吟醸と純米大吟醸の違いとは?味と価格の真相や格付けの誤解を徹底解明について押さえておきたい 理由を厳選して解説いたします。
ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「純米大吟醸こそが最高峰であり、大吟醸はアルコールで薄めた下位互換」という言説が今なお散見されます。しかし、大吟醸と純米大吟醸どっちが上かという問いに対する清酒業界の公式見解は、「上下関係など一切ない」というものです。
なぜ日本国内にこれほど強い「純米至上主義」が根付いてしまったのでしょうか。背景には、戦後の深刻な米不足の時代に生まれた「三倍増醸酒(三増酒)」の苦い歴史があります。当時の三増酒は、少ない米から大量の酒を造るために、工業用アルコールを水で薄め、糖類や酸味料を大量に投入して味を整えた粗悪なものでした。これが原因で「翌日ひどい頭痛に襲われる」「アルコール添加=悪酔いする安酒」という社会的なネガティブイメージが消費者の脳裏に深く刻み込まれたのです。
その後、1980年代後半からの地酒ブームとともに「米だけで造った本物の酒」を掲げる純米酒復権運動が過熱しました。その結果、一種の「純米信仰」が社会心理として形成され、アルコールが添加されている大吟醸まで不当に低く見られる歪みが生じてしまいました。
現場の事実を物語る象徴的な証拠があります。毎年春に開催される日本で最も権威あるコンテスト「全国新酒鑑評会」で金賞を受賞する出品酒の圧倒的多数は、純米大吟醸ではなく「大吟醸」です。酒蔵がプライドを賭けて最高の技術を競い合う鑑評会用の仕込みにおいて、杜氏たちはあえて大吟醸を選択します。ある著名蔵の総杜氏は次のように証言しています。
「吟醸香の主成分であるカプロン酸エチルは水に溶けにくく、アルコールに溶けやすい性質を持っています。醪(もろみ)を搾る直前にごく微量の醸造アルコールを投入するのは、醪の中に閉じ込められている華やかな香りを一気に引き出し、酒質をクリアに引き締めるための高等技術です。投入のタイミングや量を1分1秒でも誤れば台無しになる、杜氏の腕が最も試される瞬間なのです」
つまり、大吟醸におけるアルコール添加は決して「かさ増し」ではなく、香りを極限まで抽出して後味のキレを追求する職人の芸術的調合に他なりません。