歩きスマホはなぜ「頭おかしい」のか?行動科学が暴く危険の心理
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本人は危険だと分かっているはずなのに、なぜ画面から目を離せないのか。この疑問を解く鍵は、行動心理学と認知科学の知見にある。
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した「二重過程理論」によれば、人間の脳には直感的な「システム1」と、論理的で注意力を要する「システム2」が存在する。スマートフォンから届くSNSの通知や刺激的な動画コンテンツは、脳の報酬系を即座に刺激し、システム1を強力に占有する。その結果、周囲の環境変化を察知するためのシステム2が完全に遮断されてしまう。
認知科学の研究でも、人間が処理できる視覚情報のリソースには厳密な限界があることが実証されている。スマホの画面に意識が集中しているとき、人間の視野は通常の20分の1程度にまで狭まり、いわゆる「非注意による盲目(Inattentional Blindness)」状態に陥る。本人は「見えているつもり」で歩いているが、実際には迫り来る自動車や階段の段差が脳に認知されていない。この「認知の錯覚」こそが、周囲から見れば無謀で「頭おかしい」としか思えない行動を繰り返させる心理的メカニズムである。