筆職人が明かす寿命3倍の極意!墨残りを根絶する正しい筆洗い
筆職人が明かす寿命3倍の極意!墨残りを根絶する正しい筆洗いの特集記事を解説します。最新トレンドが詰まっています。
「油汚れのように温水で落としたい」という発想は、獣毛にとって致命傷となる。40度を超える熱湯をかけると、動物の毛の主成分であるケラチンタンパク質が変質し、キューティクルが破壊されて二度とまとまらなくなる。さらに悲惨なのは、軸と毛束を固定している接着剤(接着用の樹脂や伝統的な糊)が熱で溶け出し、ごっそりと毛が抜け落ちる脱毛現象だ。
台所用合成洗剤や固形石鹸の乱用も厳禁である。強い界面活性剤は、羊やイタチの毛が本来持っている天然の油分を完全に奪い去ってしまう。油分を失った毛はパサつき、静電気を帯びやすくなり、墨離れが極端に悪化する。洗剤を使えば一見すると墨は素早く落ちるが、それは筆の息の根を止める代償に過ぎない。
もう一つの典型的な過ちは、洗った後にキャップをはめて密閉することだ。持ち運び用のプラスチックキャップは保護具であって保管用ではない。濡れたまま密閉された筆の内部では湿気がこもり、瞬く間にカビが繁殖し、毛根が腐敗する。現代の住環境は気密性が高いため、カビによる腐食速度は想像以上に速い。