『麦と兵隊』に隠された真実|火野葦平の傑作が暴く戦場のリアル

『麦と兵隊』に隠された真実|火野葦平の傑作が暴く戦場のリアルの総合ガイドをご紹介します。専門的な知識が詰まっています。

文字媒体の枠を越え、昭和初期の巨大なメディアミックス現象となった点も『麦と兵隊』の特筆すべき側面です。流行歌としての『麦と兵隊』は、藤浦洸作詞、倉若晴生作曲による名曲で、東海林太郎がロイド眼鏡に燕尾服で直立不動のまま直向きに歌う姿が国民の胸を打ちました。軍歌でありながら、曲調は短調で悲痛な情緒が漂い、歌詞の末尾「友よ来て見よ 麦の秋」には戦友を悼む深い祈りが込められていました。

一方、映像分野でも日活による麦と兵隊 映画 キャスト 経緯には、当時の映画人たちのただならぬ気迫が込められていました。メガホンを取ったのは、リアリズム演出で知られる巨匠・田坂具隆監督。主演の小杉勇をはじめ、見川秀吉、井染四郎ら実力派キャストが名を連ねました。1939年秋に公開されたこの映画は、派手な戦闘アクションシーンを極限まで削ぎ落とし、ただひたすらに土埃にまみれて中国大陸を歩き続ける兵士たちの「足元」や「疲弊しきった背中」を長回しで映し出すという、極めてドキュメンタリー的な野心作として制作されました。

軍部は当初、もっと勇壮な戦勝絵巻を期待していましたが、完成したフィルムに漂う重苦しい疲労感と真実味は、観客に強烈な衝撃を与えました。「プロパガンダ映画」の枠組みを内側から食い破り、戦場の泥臭い実相を銀幕に定着させた映画史上の傑作として、今日でも国立映画アーカイブなどで高く評価されています。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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