「いらっしゃいますでしょうか」は失礼?正しい敬語と現場の本音
「いらっしゃいますでしょうか」は失礼?正しい敬語と現場の本音とはどんな影響があるのか? 背景や要点を丁寧に紐解いて紹介します。
言葉の正誤をめぐる議論は、出版・メディア業界においてより切実なテーマであり続けてきた。三浦しをんの小説でNetflixのアニメや実写ドラマでも世界的な共感を呼んだ『舟を編む』では、編纂者たちがひとつの言葉の意味や使われ方の変遷に人生を捧げる姿が描かれる。辞書作りの現場において、言葉は固定された化石ではなく、人々の息遣いによって形を変える生きた潮流として捉えられている。
言語学者の金田一秀穂は、敬語の本質について「相手への配慮と親愛の表現」であると繰り返し説いてきた。形式的な文法エラーをあげつらうことよりも、そこに込められた敬意のベクトルがどこを向いているかを見極める姿勢が重要だという指摘だ。出版や校閲のプロフェッショナルたちも、厳格な文脈では「いらっしゃいますか」へと手を入れるが、市井の会話における過剰敬語を無下な間違いとして切り捨てることはしない。言葉が生き物である以上、揺らぎそのものが時代のカルテなのだ。