卵を産む哺乳類が生き残った理由とは?カモノハシと単孔類の全貌
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「総排出腔を持ち、卵を産むのであれば、爬虫類や鳥類の仲間に入れたほうが自然ではないか?」と疑問に思う読者も少なくないでしょう。しかし、動物学における哺乳類の定義と分類に照らし合わせると、単孔類が紛れもない哺乳類であることは揺るぎない事実として証明されています。
そもそも生物学において、ある動物が哺乳綱(Mammalia)に分類されるかどうかは「出産形態(卵生か胎生か)」ではなく、主に以下の3つの解剖学的・生理学的条件によって厳格に定義されています。これが単孔類が哺乳類に分類される根拠です。
- 乳腺(母乳を作る器官)を持ち、幼児に授乳して育てること
哺乳類の英語名「Mammal」がラテン語の「Mamma(乳房・乳腺)」に由来する通り、母乳による育児こそが最も絶対的な定義です。 - 中耳に「3つの耳小骨」が存在し、下顎が「単一の歯骨」で構成されていること
爬虫類は下顎が複数の骨で組み合わさっており、耳小骨も1つ(アブミ骨のみ)しかありません。一方、単孔類は進化の過程で顎の関節を構成していた骨(関節骨と方形骨)が耳の奥へと移動し、音を伝えるツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨の3つの耳小骨へと変化しています。これは哺乳類だけにしか見られない決定的な骨格の証拠です。 - 体表が体毛で覆われ、横隔膜による腹式呼吸と恒温性を備えていること
ハリモグラの鋭いトゲも、実はウロコではなく「体毛が束になって角質化・肥大化したもの」であり、トゲの隙間には柔らかい毛が生えています。
なかでも特筆すべきが、単孔類ならではのユニークな母乳の与え方です。カモノハシやハリモグラの母親には、立派な乳腺があるにもかかわらず、人間や犬・猫のような「乳首(乳頭)」が一切存在しません。
では、孵化したばかりの体長約1.5cm(グミの粒ほどの大きさ)しかない赤ちゃんはどうやって母乳を飲むのでしょうか。母親が仰向けになったり育児嚢(いくじのう:ハリモグラの腹部に一時的にできる袋)に子どもを入れたりすると、腹部の皮膚にある「乳区(ミルクパッチ)」と呼ばれる特定の毛穴から、汗のようにじわりと母乳が染み出してきます。赤ちゃんは母親の腹部の毛を伝って流れ出る母乳を、直接ペロペロと舐め取って成長するのです。
オーストラリアのディーキン大学やCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)の研究チームの発表によると、このように皮膚表面に直接染み出す母乳は雑菌に汚染されやすいため、カモノハシの母乳には「MLP(Monotreme Lactation Protein)」と呼ばれる極めて強力な独自の抗菌タンパク質が含まれていることが判明しています。乳首という衛生的なチューブを持たない弱点を、分子レベルの免疫進化で見事にカバーしているのです。