歯医者の麻酔で唇が曲がる原因は?治る時間の目安と危険な麻痺の見分け方
歯医者の麻酔で唇が曲がる原因は?治る時間の目安と危険な麻痺の見分け方についての最新情報をご紹介します。
治療後に鏡を見た際、思わず言葉を失ってしまう患者の多くが「歯茎に注射をしただけなのに、なぜ関係のない唇や口角まで不自然に歪んでしまうのか」という疑問を抱きます。この不可解な現象を解き明かす鍵は、顔に網の目のように張り巡らされている「感覚の神経」と「運動の神経」の解剖学的な位置関係にあります。
歯科医院で用いられる一般的な局所麻酔は、歯の痛みを感じなくさせるために、感覚を司る「三叉神経(下歯槽神経やオトガイ神経など)」の伝達をブロックすることを目的としています。ところが、麻酔薬(主に2%塩酸リドカインなど)は液体であるため、注射された部位にとどまるだけでなく、組織の毛細管現象や浸透圧によって周囲数ミリから数センチの範囲へと緩やかに拡散していきます。
この浸透した麻酔薬が、偶然にも唇や口周りの筋肉(口輪筋や口角下制筋など)を動かしている「顔面神経」の細い枝にまで届いてしまうと、運動の命令が筋肉に伝わらなくなります。その結果、麻酔を打った側の口元が完全に脱力し、重力に引かれて口角が下がってしまうのです。
笑うと余計に唇がひどく歪んで見える生理学的メカニズム
特に患者が恐怖を感じやすいのが、「普通にしている時よりも、笑ったり喋ったりした瞬間に唇が激しく片側へ引きつれる」という症状です。これは決して顔の一部が異常に収縮しているわけではありません。
笑顔を作ろうと脳が命令を出した際、麻酔が効いている麻痺側(患側)の筋肉はピクリとも動きません。一方で、麻酔がかかっていない反対側(健常側)の筋肉は通常通り力強く収縮し、口角を斜め上へと引っ張り上げます。その結果、動く正常な側だけが唇を力任せに引っ張る形となり、まるで患側がねじ曲がったかのような極端な左右非対称が生じるわけです。この「笑うと唇が曲がる原因」の正体は、健常側の引き込み現象による生理的な見かけの歪みに過ぎません。