ラストサムライの明治天皇役は誰?中村七之助19歳の抜擢理由と現在
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映画『ラストサムライ』のキャスティングにおいて、製作陣が最も難航した役の一つが「明治天皇」でした。西洋化を急進的に推し進める近代化派の大臣・大村(原田眞人)と、古き良き武士道の精神を守ろうとする勝元盛次(渡辺謙)の間で激しく揺れ動く近代日本の象徴であり、一言の台詞、一瞬の視線で国家の孤独を表現しなければならない極めて重い役割だったからです。
当時、日本国内で大規模なオーディションが開催され、名だたる実力派若手俳優たちが候補に挙がっていました。その中で、当時19歳(1983年5月生まれ、撮影時は2002年〜2003年)の中村七之助が選ばれた決定打となったのは、演技の上手さ以上に「身体に染みついた天性の気品と静止の美」でした。当時の特番インタビューやメイキング映像でエドワード・ズウィック監督は、七之助が部屋に入り、ただ静かに正座した瞬間に漂った独特の空気に息を呑んだと述懐しています。
一般的な現代劇の俳優は「動くこと」や「感情を言葉で吐露すること」で自己を表現しがちですが、歌舞伎の世界で育った役者は「静止(無言の佇まい)」の中にこそ感情の極限を宿らせます。幼少期から父である十八代目中村勘三郎(当時・五代目中村勘九郎)の厳格な指導を受け、立ち姿や視線の落とし方、首の角度一つに至るまで所作を叩き込まれていた七之助の身体性は、まさに監督が求めていた「不可侵の気品を湛えた若き現人神」のイメージと奇跡的な合致を見せたのです。