ざるそばともりそばの違いとは?海苔やつゆに隠された歴史と価格の真相
ざるそばともりそばの違いとは?海苔やつゆに隠された歴史と価格の真相とは一体何なのか? 背景や要点を簡潔に解説します。
「ざるそばともりそばの違いは海苔があるかないかだけ」という通説は、現代の商業主義のなかで簡略化された一面に過ぎません。江戸時代の風俗誌『守貞謾稿(もりさだまんこう)』をはじめとする文献資料を精査すると、ざるそばともりそばの決定的な違いは、もともと「器」と「めんつゆのグレード」に存在していたことが明確に記録されています。
当時の江戸において、日常食として親しまれていた「もりそば」のつゆは、醤油と出汁を合わせた比較的さっぱりとした辛口のつゆでした。対して、後発の高級メニューとして登場した「ざるそば」には、つゆの違いとみりんの配合において明確な差別化が図られていました。当時、高級貴重点であった三河産の「本みりん」や純度の高い砂糖をふんだんに使い、さらに出汁には最高級の鰹節の削り節(本枯節)を贅沢に煮出した「御膳返し」と呼ばれる専用の濃厚で甘みのある特製つゆが添えられていたのです。
現在の蕎麦屋における定義を見渡すと、チェーン店や大衆的な町蕎麦の現場ではオペレーション効率化のためにつゆを一元化し、「海苔の有無」のみで呼び分けるケースが主流となっています。しかし、創業100年を超える東京の老舗蕎麦店や手打ちにこだわる名店では、今なお「もり」にはキリリと醤油が立った辛汁(からつゆ)を、「ざる」にはみりんのコクを利かせた円熟味のある甘汁(あまつゆ)をと、徳利を分けて提供する伝統が息づいています。