名作『なんとなく、クリスタル』解剖!バブル前夜と未公開の裏話

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1980年、河出書房新社が主催する第17回文藝賞を受賞した際、選考委員たちの間で激しい議論が巻き起こった。従来の重苦しい人間描写や政治的リアリズムを良しとする日本の純文学・都市文学の枠組みに対し、本作が突きつけたのは、あまりにも軽やかで記号化された新しい都市生活者のリアリティだったからだ。当時の選考会場では、これを文学と呼ぶべきか否かという根底的な問いが突きつけられた。

著者の田中康夫は、当時まだ一橋大学の法学部に在籍する現役学生であった。彼が提示したテキストは、物語の筋書き以上に、442個にも及ぶ膨大な脚注が主役を張るという前代未聞の構造を持っていた。ブティック、レストラン、音楽の流行――。都市を構成する記号を客観的なデータとして並列処理する手法は、それまでの日本文学が積み上げてきた道徳的価値観をあざ笑うかのように鮮烈だった。

木村 陽翔

木村 陽翔

テックライター兼ウェブディレクター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。

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