チェーンストークス呼吸の余命と原因|下顎呼吸との違いと看取りの対応
チェーンストークス呼吸の余命と原因|下顎呼吸との違いと看取りの対応にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。
チェーンストークス呼吸は、18世紀から19世紀にかけてアイルランドの医師ジョン・チェーン(John Cheyne)とウィリアム・ストークス(William Stokes)が報告したことからその名がつきました。臨床現場におけるチェーンストークス呼吸の呼吸パターンは、規則的な波のように明瞭な特徴を持っています。
具体的には、まず極めて浅く小さな呼吸から始まり、徐々に呼吸が深く・速くなっていきます(漸増期=クレッシェンド)。呼吸の深さがピークに達すると、今度は徐々に浅く・遅くなり(漸減期=デクレッシェンド)、最終的に完全に呼吸が停止する「無呼吸期」へと入ります。この無呼吸が10秒〜30秒程度続いた後、再びかすかな呼吸が再開し、同じサイクルをぐるぐると繰り返します。1サイクルの周期はおおむね40秒〜90秒(長い場合は2分程度)です。
なぜこのような奇妙な波が生じるのでしょうか。その根底には、延髄にある呼吸中枢のフィードバック障害と血流循環の遅延というチェーンストークス呼吸のメカニズムが存在します。
人間の脳(呼吸中枢)は、動脈血中の二酸化炭素分圧(PaCO2)を常にモニタリングし、息を吸う・吐く指令を出しています。しかし、心機能の低下や脳障害が生じると、以下のサイクルでコントロールが破綻します。
① 無呼吸によって血中の二酸化炭素が蓄積し、脳が「酸素が足りない、二酸化炭素を吐き出せ」と過剰に興奮する。
② 激しい過呼吸(漸増〜過換気)が引き起こされ、血中の二酸化炭素が一気に吐き出されて基準値以下に下がりすぎる。
③ 二酸化炭素が減りすぎたことを察知した脳が「呼吸を止めろ」と指令を出し、無呼吸期に入る。
④ 心臓のポンプ機能低下などで血流が遅れていると、肺でガス交換された血液が脳の呼吸中枢に届くまでにタイムラグ(循環遅延)が生じ、脳が状況を正しく把握できずに過剰反応を繰り返してしまう。
このように、センサーと司令系統の「時間的なズレ」が繰り返されることで、波打つような呼吸パターンが固定化されます。この病態は、睡眠医療の領域では中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSR-CSA)としても位置づけられています。