見ざる言わざる聞かざるの嘘と真実!幻の4匹目と日光東照宮の教訓
見ざる言わざる聞かざるの嘘と真実!幻の4匹目と日光東照宮の教訓に関する最新の話題を丁寧に解説いたします。
栃木県日光市に鎮座する世界遺産・日光東照宮。陽明門の壮麗さに目を奪われがちですが、表門をくぐってすぐ左手に位置する国重要文化財「神厩舎(しんきゅうしゃ)」こそが、三猿が刻まれている舞台です。神厩舎とは神馬(しんめ=神に仕える馬)を繋ぐ馬小屋であり、古来より陰陽五行説や民間信仰において「猿は馬の病気や災難を祓う守護神」と信じられていたことから、建物の長押(なげし)に猿の彫刻が施されました。
一般には「見ざる・言わざる・聞かざる」と語呂良く呼ばれますが、彫刻の前に立ち左から右へと視線を送ると、並んでいるポーズの順番は「聞かざる(耳を塞ぐ)」「言わざる(口を塞ぐ)」「見ざる(目を塞ぐ)」となっています。なぜ呼び名と実際の並び順が異なるのかという点については、日本語のリズム(五七調)の良さから「見ざる・言わざる・聞かざる」という言いまわしが近世以降に定着したと伝わっています。
そして極めて決定的な事実は、この三猿が独立した作品ではないという点です。神厩舎の東西にわたる長押には、合計8面・16匹の猿の彫刻が連続して刻まれており、それは「猿の一生」を通じて「人間が歩むべき人生訓」を説いた壮大なストーリー仕立てになっています。
日光東照宮の社伝や現地案内板の解説によると、全8面の構成は次のように展開していきます。
- 第1面(母子の猿):母猿が子猿の将来を案じ、慈しみながら手をかざして見守る「誕生と母の愛情」。
- 第2面(三猿):幼少期。外界の悪事や悪口を「見ず・言わず・聞かず」、素直な心のまま健やかに育てという教え。
- 第3面(座する猿):やがて自立を迎え、独り立ちしようと決意を固める青年前期の姿。
- 第4面(大志を抱く猿):天を仰ぎ、青雲の志を抱いて大志に燃える青年の姿。
- 第5面(挫折と友情):人生の荒波に揉まれ、崖下を見つめて落ち込む猿を、仲間の猿が肩に手を置いて励ます姿。
- 第6面(恋と葛藤):異性を意識し、恋愛の喜びと同時に思い悩む成熟期の苦悩。
- 第7面(夫婦の絆):荒波を二人で乗り越え、荒波を乗り越える結婚・家庭の成立。
- 第8面(妊娠・次代へ):腹に子を宿した母猿となり、物語は再び第1面の「誕生」へと輪廻する。
こうして全体像を俯瞰すれば明らかなとおり、三猿はあくまで「感受性が豊かで影響を受けやすい幼少期に、不要な悪意や毒に触れさせないための教育的知恵」を表現したワンシーンです。大人が責任から逃れて耳目を塞ぐことを推奨しているわけではありません。