磁石につく金属は鉄だけじゃない!プロが暴く磁性の真相と判別法

磁石につく金属は鉄だけじゃない!プロが暴く磁性の真相と判別法に関する主要なデータを丁寧に解説いたします。

家庭用の流し台(シンク)やスプーン、高級鍋の素材として広く使われているステンレス鋼。カタログには「ステンレス製(SUS304)」と誇らしげに記されているにもかかわらず、手元のマグネットを近づけるとカチリとくっついてしまい、「粗悪な偽物を掴まされたのではないか」と憤るユーザーの問い合わせが後を絶たない。

この現象の鍵を握るのが、「加工誘起マルテンサイト変態」と呼ばれる金属組織の相変化だ。ステンレスは鉄を主成分とし、10.5%以上のクロムを添加して錆びにくくした合金である。そのなかでも最も普及している「オーステナイト系ステンレス(代表格が18%クロム・8%ニッケルを含むSUS304)」は、金属組織が面心立方格子構造(fcc)をとる。この構造状態では電子のスピンが相殺され、本来は磁石に全く反応しない非磁性を示す。

ところが、金属板をプレス機で打ち抜いたり、シンクの角のように急激に曲げたり、深絞り加工で引き伸ばしたりすると状況が一変する。強力な機械的応力(せん断力)が加わった部分の結晶格子がねじ曲がり、体心立方格子構造(bcc)に類似した「マルテンサイト相」へと強制的に変態してしまうのだ。

このマルテンサイト相は強い強磁性を持つ。したがって、平坦な鍋底の中央には磁石がつかないのに、折り曲げ加工が施されたフチや底の角部分だけ磁石が吸い付くという事態がごく自然に発生する。大手金属加工メーカーの開発担当者も「加工部の磁化は素材の欠陥ではなく、粘り強く成形された高品質なステンレスである物理的な証拠」と証言している。「ステンレス=磁石につかない」という固定観念は、加工工程という現場のリアルを見落とした一面的な見方に過ぎない。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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