古文「をかし」の意味とは?「あはれ」との違いと枕草子の現代語訳を徹底解説

古文「をかし」の意味とは?「あはれ」との違いと枕草子の現代語訳を徹底解説についての疑問解決ガイドをご紹介します。

「をかし」の語感を体感する上で、清少納言の『枕草子』以上に適したテキストは存在しません。全編を通じて数百回にもわたり使われるこの単語は、彼女の鋭利な審美眼を通して森羅万象を格付けしていくキーワードとして機能しています。

特に著名な第一段「春はあけぼの」から、秋と冬の記述を引いてその息づかいを検証してみましょう。

【原文】
「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへをかし。まいて雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。」

【現代語訳】
「秋は夕暮れが良い。夕日が差して山際がとても近くなったころに、カラスがねぐらへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急ぐ様子さえ風情がある。ましてや雁などが列を作って飛んでいるのが、遠くとても小さく見えるのは、たいそう趣深い。」

ここで注目すべきは、清少納言がカラスという日常的で、ともすれば不吉・不格好と見なされがちな鳥に「をかし」を見出している点です。彼女は感情に流されて涙するのではなく、「夕暮れのグラデーションの中に黒いカラスが点々と急ぎ飛ぶ幾何学的な美しさ」をクールに発見しています。さらに強調の副詞「いと(たいそう、非常に)」が接続した「いとをかし」では、彼女の知的好奇心と美意識が最高潮に達した瞬間を鮮烈に捉えています。

また、同段の冬の描写も秀逸です。

【原文】
「冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎ熾して、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。」

ここでは「をかし」の対義語的な概念として「わろし(よくない、感心しない)」が登場します。寒風吹きすさぶ早朝、白い灰ばかりになって温もりを失った炭火を「美意識に欠ける」と切り捨てる落差の演出。清少納言にとっての「をかし」とは、単なる好き嫌いを超えた、透徹した批評基準そのものであったことが分かります。

田中 結衣

田中 結衣

デジタルマーケティングコンサルタント

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

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