利他とは何か?自己犠牲や偽善と一線を画す本質とビジネスの武器
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デジタル大辞泉によると、「利他」とは「他人に利益となるように図ること。自分のことよりも他人の幸福を願うこと」と定義されています。さらに仏教用語としては、阿弥陀仏が衆生を救う働きや、人々に功徳や利益を施す行為を指します。
西洋において社会学者オーギュスト・コントが「Altruism(利他主義)」という術語を造語したのは19世紀前半のことです。しかし、日本をはじめとする東洋社会では、それより1000年以上も前から自利利他の教えとして生活や思想の深層に根づいていました。最澄が説いた「悪事を己に向かえ、好事を他に与え、己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり」という言葉は、その象徴的な原典といえます。
ここで見落としてはならないのが、「利他」と対になる「自利」の重みです。仏教における自利とは、単なる私利私欲ではなく「自らの修行を全うし、精神的に自立すること」を意味します。己が確立されていない状態で他者を救おうとしても、それは共倒れを生むか、施しという名の支配に堕ちてしまいます。政治学者の中島岳志氏が著書『利他とは何か』のなかで論じているように、利他とは自らの意志で意図的にコントロールできるものではなく、「ふと他者の痛みに触れ、思わず身体が動いてしまうような受動性」を孕んだ営みなのです。