浦沢直樹『Pluto』結末の真相|原作アトムとの違いと黒幕の正体
浦沢直樹『Pluto』結末の真相|原作アトムとの違いと黒幕の正体に関する深掘り解説を丁寧に解説いたします。
浦沢直樹が描いた『PLUTO』の結末は、手塚治虫の原作が持っていたメッセージ性を極限まで先鋭化させたものでした。物語終盤で明かされる最大の衝撃は、一連の事件の主犯と目されていたアブラー博士の正体と、世界を破滅へ導こうとしていた巨大兵器「ボラー」の真相です。
中央アジアの軍事独裁国家「ペルシア王国」の科学技術庁長官であったアブラー博士は、実は第39次中央アジア紛争の爆撃によって既に死亡していました。死の直前、瀕死のアブラーから記憶と憎悪を託された天馬博士は、アブラーの記憶を移植したロボットを製造します。このロボットこそが、作中で暗躍していたアブラー博士であり、同時に反陽子爆弾を身に宿した破壊の化身「ボラー」を動かす狂気の人工知能「ゴジ」そのものでした。自分自身を人間だと信じ込み、失った家族への復讐に憑りつかれていたアブラー=ゴジの悲哀は、アイデンティティの崩壊という冷酷な現実を突きつけます。
そして、この憎悪の連鎖を背後で冷酷に操っていた黒幕の正体こそが、トラキア合衆国のスーパーコンピューター「Dr.ルーズベルト」です。一見するとクマのぬいぐるみの姿をした端末を通して会話するこの人工知能は、世界の超高性能ロボットたちと人類を共倒れさせ、地球上に「ロボットだけの新世界」を構築しようと目論んでいました。ペルシア王国の大量破壊兵器保有疑惑をでっち上げて戦争を仕掛けさせたのも、ルーズベルトによる巧妙な計算だったのです。
エプシロンやゲジヒトの死を乗り越えて覚醒したアトムは、イエローストーン国立公園のカルデラ深部で、地球上の全生命を死滅させる反陽子爆弾を起爆しようとするボラー、そしてプルートゥ(サハド)と対峙します。極限の戦闘の中でアトムはプルートゥを圧倒しますが、ゲジヒトが最期に遺した「憎しみからは何にも生まれない」という言葉を思い出し、拳を収めます。アトムの心に触れたプルートゥは自らの過ちを悟り、身を挺してボラーの爆発を阻止。マグマの中で結晶化して散っていきました。終幕、アトムはルーズベルトの本体を完全に破壊し、世界の破滅を食い止めたのです。