競走馬は本当に馬肉になるのか?引退後の行き先と流通構造の真実

競走馬は本当に馬肉になるのか?引退後の行き先と流通構造の真実について専門的な視点から解説いたします。最新の情報をチェックしてください。

関係者への取材から浮かび上がるのは、生産牧場、厩舎、乗馬クラブ、そして家畜商が複雑に絡み合う現場の苦悩です。美浦や栗東のトレセン関係者、あるいは地方競馬の厩務員たちの手記や現場証言には、愛馬を送り出す際の引き裂かれるような心情が綴られています。

「乗馬用として引き取られる際、迎えに来た馬運車を見ればだいたいの察しがつく。清潔な乗馬クラブ専用のトラックではなく、複数の家畜をまとめて積み込む無印の大型トラックだった場合、それが何を意味するかは現場の誰もが知っているが、口には出さない」(元厩務員の告白手記より)

現場目線で見た実態として、乗馬クラブ側も決して悪意で屠殺ルートへ回しているわけではありません。乗馬施設を運営するためには、馬房代、飼料代、獣医費用、人件費で1頭につき毎月数十万円の維持費が発生します。競馬場で「走ること」だけを徹底的に叩き込まれたサラブレッドを、素人の乗客を乗せられる安全な乗馬へ再調教(リトレーニング)するには、数ヶ月単位の時間と卓越した技術を要します。

途中で「人を落とす危険性が抜けない」「脚元の骨折が再発して運動に耐えられない」と判断された馬は、クラブの経営を守るために退厩させざるを得ません。そうした馬を数十万円前後の「肉値(廃馬価格)」で買い取るのが家畜商であり、そこから熊本や青森などの肥育拠点へと集約されていきます。経済動物としての厳格な採算ラインが、現場の善意や愛情を容赦なく飲み込んでいるのが実態です。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest