ドラクエ作曲者すぎやま氏の遺産と12の後任問題|神曲秘話と現在
ドラクエ作曲者すぎやま氏の遺産と12の後任問題|神曲秘話と現在の詳細解説をご紹介します。専門的な知識が満載です。
『ドラゴンクエスト』を象徴するオープニング曲「序曲(ロトのテーマ)」。聴くだけで胸が高鳴るこの名曲の誕生にまつわる有名な逸話が、「54年と5分」の作曲秘話です。
当時、ゲーム発売までのスケジュールは逼迫しており、すぎやま氏に与えられた制作期間はわずか1週間前後でした。その極限状態の中、メインテーマのメロディ自体はピアノに向かって「わずか5分」で書き上げられたと本人が述懐しています。後年、インタビューなどで「なぜそんな短時間で神曲が書けたのか」と問われたすぎやま氏は、次のように語っています。
「パッと閃いて書いたのは5分ですが、そこには私がそれまで生きてきた54年間の音楽人生と経験がすべて詰まっています。だから、あの曲は『54年と5分』かかってできた曲なのです」
当時のファミコンは、メロディ2音+ノイズ1音という極めて制限された「3音」しか同時に鳴らせない過酷な音響環境でした。すぎやま氏はバッハに代表される対位法(複数の旋律が調和するクラシックの技法)を駆使し、3音とは思えない圧倒的な奥行きと格調高いオーケストレーションを画面の向こうに現出させたのです。
その生涯現役の情熱は国際的にも評価され、2016年には「世界最高齢でゲーム音楽を作曲した作曲家(Oldest videogame music composer)」としてギネス世界記録に認定されました。さらに2020年には文化功労者に選出され、2021年の東京オリンピック開会式における選手入場行進曲の先頭を「序曲」が飾るなど、日本のゲーム音楽を純然たる芸術・文化遺産へと引き上げた功績は計り知れません。