なぜ「トイレットペーパーがない」デマは拡散?発信源の正体と買い占めの真相
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騒動の発端は、2020年2月27日未明に行われたX(旧Twitter)上の一連の投稿でした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴いマスクの品薄が深刻化していた最中、「マスクとトイレットペーパーは同じ原材料で作られている」「中国の工場がストップしたため、次は紙類が手に入らなくなる」という根拠のない情報が突如として投下されたのです。
この投稿を行ったアカウントは、鳥取県米子市内の医療生活協同組合に勤務する一般職員のものであることが後に判明しました。投稿は瞬く間に拡散され、ネット上には「早く買いに行かないと無くなる」という焦燥感が充満。その後、勤務先である鳥取医療生活協同組合は事実関係を認め、公式サイト上で「当組合の職員が不確実な情報を発信し、社会的な混乱を招いたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪文を掲載する事態へと発展しました。
当時、警察当局や法曹関係者の間ではデマ投稿者特定と処分を巡る議論が紛糾しました。偽計業務妨害罪などの刑事責任に問われる可能性が取り沙汰されたものの、最終的に投稿者本人に計画的な悪意や業務妨害の故意を立証することは困難と判断され、刑事訴追には至りませんでした。しかし、勤務先からの厳重注意や懲戒処分、さらにはネット上での猛烈な社会的制裁を受ける結果となりました。
特筆すべきは、SNSデマ拡散の背景に潜む「善意の増幅装置」です。当初の投稿そのもののインプレッションは決して天文学的な数字ではありませんでした。しかし、「こんな悪質なデマが流れているから騙されないで!」「デマだから買い占めはやめよう」とデマを否定・批判する引用リポストが爆発的に急増。結果として、「デマである」という警告文よりも「トイレットペーパーがなくなるかもしれない」という単語の視覚的刺激だけが切り取られ、噂を知らなかった人々の不安を猛烈に煽る皮肉な結果を招いたのです。