溺死体の特徴と法医学の鑑識眼|遺体が浮き上がる日数と事件性の真相
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人間が水没した場合、肺の中の空気が水と置換されると比重が水よりわずかに重くなり、基本的には水底へと沈降します。沈んだ遺体が再び水面に姿を現す原動力となるのが、体内で生成される腐敗ガスの圧力です。
心停止後、腸内細菌をはじめとする常在菌が嫌気性発酵を開始し、硫化水素やメタン、二酸化炭素などのガスを大量に産生します。このガスが腹腔や皮下組織、内臓全体に充満することで遺体全体が風船のように膨張し、比重が水より軽くなって浮力が生まれます。体全体が巨大に変貌し、顔貌が識別困難なほど腫れ上がるこの現象を法医学では巨人様観(きょじんようかん)と呼びます。
水底から浮き上がるまでの日数は、水中環境、とりわけ水温に決定的な影響を受けます。
- 夏季(水温20〜30℃程度):細菌の増殖が極めて急速なため、沈没からわずか2〜4日程度でガスが充満し浮上します。
- 春秋季(水温10〜20℃程度):ガスの発生が緩やかになり、浮上まで1〜2週間前後を要します。
- 冬季(水温10℃以下):腐敗の進行が著しく抑制されるため、浮上までに数週間から1カ月以上、深層水温が極めて低いダム湖などでは春の雪解け期まで数カ月間沈んだままになるケースも珍しくありません。
なお、水面に浮上した遺体は、頭部や四肢の重さと体幹部(腹部・胸部)の浮力のバランスにより、多くの場合うつ伏せ(腹面を下にした状態)の姿勢を取ります。