抗利尿ホルモン不適合分泌症候群とは?浮腫なし低Na血症の原因と治療を徹底解説

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群とは?浮腫なし低Na血症の原因と治療を徹底解説とはどのようなものなのか? 専門的な分析を整理してお届けします。

SIADHの診断は、厚生労働省難治性疾患等政策研究事業(間脳下垂体機能障害分野)および日本内分泌学会の診断基準に厳格に則って進められます。単にナトリウム値が低いだけでは診断できず、複数の生化学検査数値をクロスチェックする論理的アプローチが不可欠です。

主たる診断基準項目は以下の通りです:

  • 低ナトリウム血症の存在:血清ナトリウム値が135 mEq/L未満(重症例では120 mEq/L未満に低下)。
  • 血漿浸透圧の低値:血漿浸透圧が275 mOsm/kg未満へと著明に低下。
  • 尿浸透圧の相対的高値:低血漿浸透圧下であるにもかかわらず、尿浸透圧が100 mOsm/kgを超えて濃縮されている(多くは300 mOsm/kg以上)。
  • 尿中ナトリウム排泄の持続:通常の食塩摂取下において、尿中ナトリウム濃度が20〜30 mEq/L以上を維持している。
  • 臨床的な正常体液量(Euvolemia):明らかな脱水所見(皮膚ツルゴール低下、口腔内乾燥、低血圧)や浮腫(下腿浮腫、腹水、胸水)を認めない。
  • 他疾患の除外:腎機能正常(重篤な腎不全がない)、副腎皮質機能正常(血清コルチゾール低下がない)、甲状腺機能正常(TSH・FT4が正常範囲内)。
  • バソプレシン(ADH)の測定:血漿浸透圧低下時にもかかわらず、血中バソプレシン濃度が測定感度以上で検出される。

低ナトリウム血症を呈する主要疾患との鑑別比較

臨床現場において最も危険な誤診は、SIADHと中枢性塩類喪失症候群(CSWS: Cerebral Salt Wasting Syndrome)の混同です。両者は検査値が酷似していますが、病態と治療法が正反対となります。

鑑別項目SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌)CSWS(中枢性塩類喪失症候群)心不全・肝硬変(有効循環血流量低下)体液量状態(Volume)正常(Euvolemic)〜軽度増加減少・脱水(Hypovolemic)過剰・著明な浮腫(Hypervolemic)中心静脈圧(CVP)正常〜軽度上昇(6〜10 cmH2O)低下(6 cmH2O未満)著明に上昇(12 cmH2O以上)血中尿酸値(UA)著明な低値(4.0 mg/dL未満)正常〜高値(脱水による濃縮)高値(利尿薬使用や循環不全)血中BUN / Cr比低下〜正常(BUN低下傾向)上昇(脱水によるBUN優位の上昇)上昇(腎血流低下)第一選択治療水分制限(500〜800 mL/日)大量の生理食塩液・Na投与ループ利尿薬・原疾患治療

特に頭部外傷やクモ膜下出血の術後に生じる低ナトリウム血症では、SIADHとCSWSの識別が生死を分けます。脱水状態にあるCSWSに対してSIADHの治療である「水分制限」を行うと、脳虚血や脳梗塞を引き起こす致命的な事態に直結するため、体液量の客観的評価(体重変化、CVP、下大静脈径IVC、尿酸値)が極めて重要となります。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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