「見る」と「観る」の違いとは?映画やテレビの使い分けと漢字の盲点
「見る」と「観る」の違いとは?映画やテレビの使い分けと漢字の盲点について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をお届けします。
「映画や舞台は『観る』と書くのが大人の教養である」という言説がネット上で広く流布していますが、ここには公的な表記ルールにおける決定的な盲点が存在します。実は、文部科学省・文化庁が告示している現行の「常用漢字表」において、「観」の訓読みである「観る(みる)」は採用されていません。「観」の公認されている読みは音読みの「カン」のみであり、「みる」は表外訓(常用漢字表にない読み方)という扱いになります。
この公的制約があるため、日本新聞協会が定める『新聞用語集』やNHKをはじめとする放送業界の字幕ガイドライン、さらには中央省庁が作成する公用文では、いかに優れた芸術作品であってもすべて「映画を見る」「演劇を見る」と表記する統一ルールが敷かれています。新聞記事を検索すると、大ヒット映画の興行成績を伝える記事であっても、98%以上の割合で「映画を見る」と平易な漢字が用いられているのはこのためです。
「観る」と書いたからといって国語として誤りというわけでは決してありません。個人のブログ、映画レビューサイト、小説、エッセイなどの私文書では、書き手の豊かな感性を伝えるために「観る」を積極的に使う表現手法が推奨されます。しかし、「公式な公用文や学校教育の場、公的レポートにおいては『見る』が唯一の標準である」という事実は、知識として確実に押さえておく必要があります。