自家受粉の仕組みと驚きの生存戦略|他家受粉との違いと家庭菜園の技
自家受粉の仕組みと驚きの生存戦略|他家受粉との違いと家庭菜園の技の基本情報から最新動向までを徹底的にカバーしました。
前述の近交弱勢を避けるため、被子植物の約半数は「自分の花粉では決して種を作らせない」精緻な生体防御メカニズムを進化させてきました。それが自家不和合性の仕組みと理由として解明されている植物の拒絶反応です。
自家不和合性を持つ植物の柱頭に自分自身の花粉が付着すると、植物は「自己」の花粉であることを瞬時に認識します。この自己認識を司っているのが、高度に多様化した「S遺伝子座(Sアレル)」と呼ばれる複合遺伝子群です。キャベツやダイコンなどのアブラナ科植物では、花粉表面のタンパク質と柱頭側の受容体キナーゼが結合することで情報伝達が起き、花粉への給水が遮断されて発芽そのものが阻止されます。
一方、トマトの野生種やペチュニアなどのナス科植物では、花粉管が雌しべの花柱内を伸長している途中で、雌しべから分泌されたRNase(リボ核酸分解酵素)が花粉管内に取り込まれ、花粉管のRNAを破壊して伸長をストップさせます。自分自身の遺伝子を徹底的に排除し、外部から運ばれてきた「非自己」の花粉だけを選別して受精を受け入れるという、動物の免疫系にも匹敵する驚くべき識別システムです。
花粉の受精阻害以外にも、雄しべと雌しべが成熟するタイミングを意図的にずらす「雌雄異熟(キキョウやトウモロコシなど)」や、雄しべと雌しべの長さを個体ごとに変えて物理的に接触を防ぐ「異形花柱性(サクラソウなど)」など、植物はありとあらゆる物理的・化学的障壁を築いて自家受粉を回避しています。