桃の天然水はなぜ消えた?回収騒動と呪いの真相、2026年の現在地

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ネット上のまとめ記事やSNSの投稿では、「カビ騒動で大赤字になり、JTが耐えきれなくなって桃の天然水を捨てた」というストーリーが語られがちです。しかし、企業の財務諸表や公開された経営方針を綿密に精査すると、この見解には大きな事実誤認が含まれています。

実際にJTが飲料事業からの完全撤退を発表したのは、カビ回収騒動から16年も経過した2015年2月のことです。当時、桃の天然水や缶コーヒー「Roots(ルーツ)」を擁するJT飲料事業は、自販機オペレーター事業を含めて約1,500億円規模の売却価値を持つ強固なアセットでした。撤退の本質的な契機は、国内の飲料市場が激しい価格競争と自動販売機の設置場所争奪戦によって利益率が低下していたこと、そしてJT本体が「グローバルたばこ事業」への巨額投資と事業の選択・集中を迫られていた経営決断にあります。

サントリー食品インターナショナルがこの事業譲渡合意を結んだ最大の狙いも、桃の天然水という単品ブランド欲しさではなく、JTが抱えていた全国約26万台規模の優れた自動販売機運用網(株式会社ジャパンビバレッジホールディングス等の株式取得)の獲得でした。つまり、桃の天然水の消長は品質問題だけで終わったのではなく、日本の飲料流通における冷徹なM&A戦略のチェス盤の上で動かされていたのです。

清水 千尋

清水 千尋

フード&トラベルライター

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。

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