メルロ=ポンティ身体論の核心|デカルトを覆す固有身体と現代への衝撃

メルロ=ポンティ身体論の核心|デカルトを覆す固有身体と現代への衝撃に関する主要なデータを丁寧に解説いたします。

1945年に刊行された『知覚の現象学(Phénoménologie de la perception)』は、メルロ=ポンティ身体論の金字塔です。本書の核心を理解する上で不可欠な2大概念が「固有身体」と「身体図式」です。

第一に固有身体(corps propre)とは、客観的な解剖学の対象となる「客体としての身体」ではなく、内側から経験される「生きられた身体」を指します。たとえば、右手で左手を触るとき、左手は触れられる「物体」であると同時に、右手を触り返している「主体」でもあります。この「触れること」と「触れられること」が重なり合う両義性(アンビギュイティ)こそが固有身体の決定的な特徴です。身体は純粋な精神でも単なる物質でもない第三項として存在しています。

第二に身体図式(schéma corporel)とは、自分の手足の位置をいちいち意識することなく、空間内で状況に応じて即座に行動を組み立てられる無意識的な身体的知覚のシステムです。メルロ=ポンティは、病理学における「幻肢(切断された手足が存在するように感じて痛む現象)」や失行症の臨床記録を精査し、身体図式が単なる記憶の蓄積ではなく「世界へ開かれた活動の潜勢力」であることを立証しました。

熟練したドライバーが車の車幅を自分の体幅のように感覚し、盲人が手にする白杖が単なる棒ではなく「指先の延長」として路面を感じ取るように、道具は身体図式へと組み込まれます。人間はあらかじめ完成された知性で空間を把握するのではなく、身体を通じて空間を創り出しているのです。

小林 直樹

小林 直樹

トレンドリサーチャー

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。

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