中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』が不朽の最高傑作と呼ばれる理由と魅力の真相
中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』が不朽の最高傑作と呼ばれる理由と魅力の真相に関する専門家の意見を分かりやすく解説いたします。
2016年12月、足かけ28年に及んだシリーズは『鬼平犯科帳 THE FINAL』をもって大団円を迎えました。放送されたのは「前編・二年客」と「後編・一本眉」の2部作です。
最終回「一本眉」の結末において、長谷川平蔵は最大の宿敵でありながら盗賊の信念を持つ男(宇津井健がかつて演じた一本眉の系譜を継ぐドラマ)と対峙します。ネタバレに触れると、劇中で平蔵は役職を辞するわけでも、命を落とすわけでもありません。江戸の町を見下ろす高台で、変わらぬ厳しい眼差しと慈愛をたたえながら、いつものように「火付盗賊改方、長谷川平蔵である」と職務へ戻っていく日常の延長として幕を閉じました。
池波正太郎の原作小説は、池波の急逝(1990年)によって未完のまま絶筆となっています。原作では平蔵の最期は明確に描かれておらず、史実の長谷川宣以(平蔵)も火付盗賊改方の激務ののち、役を免ぜられた数カ月後に50歳の若さで病没しています。
テレビドラマ版が選んだ「終わりのない終わり」は、二代目中村吉右衛門という稀代の名優が演じた平蔵が、永遠に江戸の町を見守り続けているという希望を視聴者に残すための最高の演出意図でした。ファイナルの撮影終了後、吉右衛門が「重い荷物をようやく下ろしたような寂しさがある」と涙を浮かべながら語った姿は、関係者の間で今も語り草となっています。