定期昇給とは?ベアとの違い・平均相場や上がらない職場の真相
定期昇給とは?ベアとの違い・平均相場や上がらない職場の真相について分かりやすく解説いたします。専門家の見解をチェックしてください。
ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「うちの会社、今年は昇給がゼロだったけれど違法ではないのか」「真面目に1年働いたのに基本給が1円も上がらない」といった悲鳴に近い書き込みが散見されます。しかし、労働法務および雇用契約の法的な観点から言えば、「定期昇給を毎年必ず実施しなければならない」という法律上の義務は存在しません。
定期昇給が実施されない、あるいは見送られる背景には、主に3つの明確な理由が存在します。
1. 就業規則の昇給規定に仕組まれた「例外条項」
労働基準法第89条により、企業が従業員を雇用する際、昇給に関する事項は就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」とされています。しかし、大半の企業の就業規則には以下のような一文が添えられています。
「昇給は原則として毎年4月に行う。ただし、会社の業績不振、その他のやむを得ない事由がある場合、または社員の勤務成績によっては、これを行わないことがある。」
この「昇給停止条項(不昇給条項)」が存在する限り、企業が業績悪化や財務基盤の防衛を理由に定昇を見送ることは、法的に完全な適法行為となります。契約違反や労働基準法違反に問うことは原則として極めて困難です。
2. 人事評価査定基準の厳格化と「降給テーブル」の存在
年功序列を脱却した現代の賃金体系では、定期昇給の枠組みの中に厳しい評価格差が組み込まれています。従来の「普通に仕事をしていれば全員一律で上がる」査定基準から、正規分布による相対評価へと移行している企業が大半です。
例えば、5段階評価(S・A・B・C・D)を採用している企業では、標準の「B評価」で月額3,000円の昇給、「A評価」で6,000円の昇給となる一方、下位の「C評価は昇給額0円」「D評価は基本給が月額マイナス5,000円(降給)」という賃金規程を設けている例も珍しくありません。「定昇制度はあるが、自分がその基準に達していなかった」というケースが日常化しています。
3. 定期昇給の時期と実務サイクルのズレ
「定期昇給は何月に反映されるのか」という点もトラブルの原因になりやすいポイントです。日本企業の約7割は4月改定・5月支給分(または6月支給分)反映を採用しています。しかし、人事評価の確定作業、労使交渉の妥結時期、さらには就業規則上の算定期日の設定によって、実際に給与明細に反映される月が初夏以降にずれ込むケースがあり、「昇給していない」と錯覚する原因になっています。