花束を君に送ろうの真実|宇多田ヒカルが母・藤圭子に捧げた涙の理由

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インターネット上の掲示板やSNSでは、結婚式での両親への手紙朗読シーンや、卒業式の定番ソングとして本作を挙げる声が散見されます。もちろん、音楽の受け取り方はリスナーの自由であり、感謝を伝えるポップソングとしての完成度は非の打ち所がありません。しかし、本作を単なる「明るい感謝と旅立ちの歌」としてのみ消費してしまうと、宇多田ヒカルという表現者が到達した文学的境地を見落とすことになります。

歌詞の中盤に配された「涙色の花束を君に贈ろう」というフレーズ。ここでの花束は、決して色とりどりの華やかなブーケだけを意味していません。愛憎、後悔、悲嘆、そして言葉にならなかった叫び――そのすべてを凝縮した涙の結晶こそが「涙色の花束」です。

公式エピソードとして知られるのが、NHKの特番『宇多田ヒカル 〜今のわたしを伝える旅〜』などで垣間見せた彼女のクリエイティビティの変化です。休止前の彼女は自身の内省的な葛藤を複雑なコード進行やリズムで先鋭化させていましたが、本作ではあえて奇をてらわない日本語の響きとメロディに徹しました。自身のプライベートな傷口をそのまま晒すのではなく、誰の日常にも存在する「愛する者との不可逆な別れ」に重ね合わせられるよう、徹底して言葉が磨き上げられている点にこそ、真の凄味があります。

伊藤 翔太

伊藤 翔太

フード&トラベルライター

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

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