「能は歌詠み」の真意とは?世阿弥が託した和歌の美学と幽玄の秘密
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能の台本にあたる「謡曲(ようきょく)」は、中世日本語文学の最高峰と評されます。その詞章(ししょう)には、『源氏物語』『伊勢物語』『平家物語』といった古典の名文や有名和歌が幾重にも織り込まれています。
謡曲の文章には、和歌特有の修辞技法である「掛詞(かけことば)」や「縁語(えんご)」が巧みに散りばめられています。例えば、ひとつの言葉が「旅の地名」と「登場人物の心情」の双方を意味するダブルミーニングとなり、わずか数行の謡の中に何層もの情景が凝縮されます。
観客は謡の旋律を耳で聴きながら、背景にある和歌の情景を頭の中に思い描きます。謡曲とは、耳で聴く文学であり、役者の声を通じて古典の美を体感する精緻な言葉の小宇宙なのです。