骨がないのに自在に動く?舌の構造と味覚の真相・危険な病気のサイン
骨がないのに自在に動く?舌の構造と味覚の真相・危険な病気のサインについて見逃せない 注意点を厳選して解説いたします。
かつて学校の教科書や一般向け書籍で「舌先は甘味、奥は苦味、側面は酸味を感じる」と図解された「味覚マップ」を目にしたことがある人は多いはずです。しかし、現代の口腔生理学において、この説は完全な誤謬(誤った神話)として否定されています。
この誤解の発端は、1901年にドイツの心理学者ダーヴィト・ヘーニッヒが発表した論文のデータを、後年の研究者が極端に解釈して図式化したことにあります。近年の分子生物学的研究によって、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の「基本5味」を感知する受容体は、味蕾が存在する部位であれば舌のどのエリアにも均等に分布していることが科学的に証明されています。部位による感度のわずかな差こそあれ、「特定の場所でしか特定の味を感じない」ということは絶対にありません。
では、舌はどのようにして味を認識しているのでしょうか。舌の表面(舌背)を観察すると、無数の小さな突起が見られます。これが「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」です。舌乳頭には主に4つの種類が存在し、それぞれ異なる形態と役割を持っています。
舌の表面全体に最も多く(約90%)分布し、ヤスリのようなザラザラ感を作っているのが「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」です。実は、この糸状乳頭には味を感じるセンサーである「味蕾(みらい)」が一切存在しません。食べ物を舌の上で保持し、すりつぶすための機械的な摩擦装置として働いています。
味蕾を備えているのは残りの3種類です。舌尖や側面に点在する赤いキノコ状の「茸状乳頭(じじょうにゅうとう)」、舌の後方側面にヒダ状に並ぶ「葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)」、そして舌の奥(舌根との境界)に「ハの字型」を描いて並ぶ大型の「有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)」です。
これらの乳頭の溝や側面に埋め込まれている味蕾は、玉ねぎのような形状をした細胞の集合体(1個あたり約50〜100個の味細胞)です。食べ物に含まれる味物質が唾液に溶け出し、味蕾の先端にある「味孔」から内部へ入り込むと、味細胞の受容体と結合します。その化学変化が電気信号へと変換され、顔面神経(鼓索神経)や舌咽神経を経由して大脳の味覚野へ瞬時に伝達されることで、脳は「美味しい」「苦い」と知覚するのです。