山下清とおにぎりの嘘と真実|ドラマが描かなかった放浪日記の正体

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おにぎりが生存のための手段だったとすれば、山下清が心から喜んだ「本当の好物」とは一体何だったのか。遺族や知人が語る記録からは、極めて率直で贅沢な美食家としての一面が見えてくる。

清が何よりも愛したのは、「ウナギの蒲焼き」と「牛肉」、そして「エビフライ」だった。特にウナギに対する執着は凄まじく、展覧会が成功して経済的な余裕ができてからは、足繁く名店に通っていた記録がある。また、すき焼きも大好物で、鍋いっぱいに盛られた牛肉を周囲が驚くほどの勢いで平らげたという。

さらに、甘いものにも目がなかった。旅先で小銭を手に入れた際には、迷わず羊羹やキャラメル、菓子パンを買い求めている。『放浪日記』の中にも、民家で親切に甘い煮物や菓子を出されたときの喜びようが、おにぎりをもらった時とは比較にならないほどの熱量で描写されている。

「質素なおにぎりを慎ましく食べる放浪者」という世間のイメージとは裏腹に、本人は濃厚な味付けのごちそうを心から愛する極めて人間味あふれる性格の持ち主だった。

田中 結衣

田中 結衣

デジタルマーケティングコンサルタント

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

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