朝永振一郎の何が凄いのか?くりこみ理論の真相と湯川秀樹との光と影
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朝永振一郎は、類まれな文章家でもありました。彼が遺した著作は、単なる専門書にとどまらず、日本文学・随筆史においても高い評価を受けています。これから朝永の思考に触れたい読者に向けて、おすすめの著書とそこに込められた思想を紹介します。
最高傑作として名高いのが、岩波新書から刊行されている『物理学とは何だろうか』(上・下巻)です。病床に伏しながら口述筆記を交えて執筆されたこの本は、ケプラーやガリレオから始まる物理学の歴史を、人間がいかに自然の謎と対話し、失敗を重ねながら概念を切り開いてきたかという「人間ドラマ」として鮮烈に描き出しています。数式が苦手な文系の読者であっても、科学という営みの本質的なスリルに圧倒される不朽の名作です。
また、随筆集『鏡の中の物理学』や『鳥獣戯画』では、科学者の冷徹な眼差しと江戸前の落語のような軽快な語り口が見事に調和しています。数ある名言まとめの中でも、科学教育の本質を射抜いた言葉として全国の小中学校や研究機関に掲げられているのが、次の詩情あふれる言葉です。
「ふしぎだと思うこと これが科学の芽です
よくかんがえること これが科学の茎です
そしてさいごにつきためること これが科学の花です」
この言葉に象徴されるように、朝永は「答えを急ぐこと」を極度に戒めました。「わかったつもりになること」の危うさを誰よりも知り、自然に対する謙虚な驚き(Sense of Wonder)を持ち続けることの大切さを説き続けたのです。