全盲の見え方は真っ暗ではない?当事者が語る「無」と視覚の真実
全盲の見え方は真っ暗ではない?当事者が語る「無」と視覚の真実についての最新情報をお届けします。
見え方の真実を語る上で欠かせないもう一つの医学的事実が、シャルルボネ症候群(Charles Bonnet Syndrome: CBS)です。
これは、中途失明者や加齢黄斑変性などで著しい視覚低下を起こした人の一部に、鮮明な「幻視」が現れる現象を指します。当事者が公の場や医学的研究で語った証言によると、視界の中に実在しない鮮やかな花畑が広がったり、見知らぬ奇妙な衣装を着た群衆が歩いていたり、天井から幾何学模様が降りてきたりするといいます。
この現象の引き金となるのは精神疾患や認知症ではありません。原因は、脳の視覚野への入力遮断です。網膜からの刺激が途絶えたことで、飢餓状態に陥った脳の視覚皮質が興奮状態となり、過去の記憶や無意識の視覚断片を勝手にスクリーンに投影してしまう「脱抑制(抑制の解除)」によって引き起こされます。
シャルルボネ症候群を経験した当事者の多くは、「気が狂ってしまったのではないか」という強い恐怖から、家族や医師にその見え方を打ち明けられずに孤立します。しかし、これは「脳が視覚の欠損を自律的に埋め合わせようとして暴走している生体反応」に他なりません。人間にとって「光を見る」という行為が、眼球単体ではなく、いかに脳の自発的な情報処理に依存しているかを物語る決定的な証拠です。