完顔阿骨打の正体|弱小女真族が巨大帝国・遼を電撃打倒できた全真相
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世界史の授業で誰もが一度は目にする難解な漢字表記ですが、完顔阿骨打の読み方は一般に日本語音読みで「かんがん・あくただ」、原音に近い中国語読みでは「ワンヤン・アグダ(Wànyán Āgǔdǎ)」と発音されます。「完顔」が部族名(氏族名)であり、「阿骨打」が個人名です。近年の言語学的・音韻学的研究によれば、アグダという名はツングース系言語で「暁」や「光彩」、あるいは松花江の支流である阿什河(アルチュフ川=金の産地)に由来すると推測されています。
阿骨打が率いたのは、ツングース系狩猟・農耕民である女真族(のちの満洲族)でした。当時の女真族は一枚岩ではなく、遼の支配領域に編入されて戸籍に登録された「熟女真(じゅくじょしん)」と、白山黒水(長白山とアムール川流域)の奥地に暮らす独立性の高い「生女真(せいじょしん)」に二分されていました。阿骨打が生まれた完顔部は、まさに文明の辺境とみなされていた生女真の最有力氏族でした。
厳寒の森林地帯で熊や虎を狩り、馬を駆る屈強な戦士集団。彼らは血縁を中心とした頑強な結束力を誇る一方で、部族間の激しい私闘に明け暮れていました。阿骨打の父である劾里鉢(ヘリボ)や兄の烏雅束(ウヤソ)が周辺部族の統合を進め、その基盤を受け継ぐ形で1113年、阿骨打は生女真全体の統括者である「都勃極烈(トボキレ=部族同盟の最高指導者)」に就任しました。この辺境の首長の覚醒こそが、東アジアの地政学を根底から覆す引き金となったのです。