小石川療養所の真実|赤ひげの舞台となった日本初無料病院の凄さと現在
小石川療養所の真実|赤ひげの舞台となった日本初無料病院の凄さと現在の特集記事をお届けします。最新トレンドがチェックできます。
小石川養生所を語る上で欠かせないのが、文豪・山本周五郎の名作小説『赤ひげ診療譚』(黒澤明監督による映画『赤ひげ』でも著名)です。無骨でありながら患者に慈愛を注ぐ医師「赤ひげ」こと新出去定(にいで・きょじょう)の姿は、多くの人々に強烈な印象を与えました。
しかし、「赤ひげ」という医師は史実には存在しない架空の人物です。小川笙船やその後の歴代医官たちの献身的なエピソードが重ね合わされ、文学的な英雄像として昇華されたものです。
また、歴史愛好家の間で議論される「養生所は人体実験の場だったのか?」という疑惑について、現存する幕府の公文書や診療記録を調査しても、非人道的な生体実験が行われた事実は一切確認されていません。むしろ、処方された薬草の記録や食事の配給規定からは、限られた財源の中で可能な限り患者の生命を維持しようとした当時の医師たちの苦闘が浮かび上がってきます。
ただし、現代医学から見れば感染症の隔離技術や外科手術の技術には限界があり、結核や栄養失調の末期患者を救いきれなかった事例は多々ありました。そうした悲惨な死の現場が、庶民の間に「一度入ったら出られない」という誇張された恐怖を生み出す背景となったのです。