ローマ帝国の国境線リーメス解剖|総延長数千キロの防壁と真の目的
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帝国の国境線には、地域ごとの地勢や仮想敵の脅威度に応じて異なる構造の防衛線が築かれました。特に有名なイギリスの2大長城とドイツの防衛線を比較すると、ローマの柔軟な防衛思想が浮き彫りになります。
防衛線名位置・総延長・年代構造と特徴現在の保存状況・評価ハドリアヌスの長城イギリス北部(タイン川〜ソルウェー湾)
全長:約117.5km(80ローママイル)
建設:西暦122年着工東側は堅固な石造、西側は土塁(のちに石造化)。高さ約4〜5m、前面に巨大なV字堀、背後に軍用道路とvallum(土塁堀)を配置。ハドリアヌスの長城の場所は国立公園内にあり、城壁や要塞跡が極めて良好に残存。観光トレイルが整備されている。アントニヌスの長城スコットランド中央部(フォース湾〜クライド湾)
全長:約60km(37ローママイル)
建設:西暦142年着工石垣の基礎の上に芝土(ターフ)を積み上げた土塁構造。前面に深さ約3.6m、幅約12mの大規模な堀を掘削。ハドリアヌスとのアントニヌスの長城の違いは材質(石造と土塁)と短命さ。約20年で放棄され、現在は堀の遺構が中心。リーメス・ゲルマニクス
(上ゲルマニア・ラエティア)ドイツ西部〜南部(ライン川〜ドナウ川間)
全長:約550km
建設:1世紀末〜2世紀初期は木造の柵(パリサード)と木造監視塔。後期に石造防壁・石造監視塔約900基、砦120基へと強固に改修。リーメス・ゲルマニクスの現在は森林内に土塁や堀跡が点在。ザールブルク城塞のように完全復元された拠点も存在。下ゲルマニア・ドナウ防衛線オランダ、ドイツ、オーストリア、東欧各国の河川沿い
全長:数千km
建設:紀元前後〜ローマ末期大河自体を防壁とし、河岸に要塞・港湾・船団基地を密に配備。人工の壁は作らず水上パトロールを主軸とした。2021年に「下ゲルマニアのリーメス」「ドナウのリーメス(西部分)」として相次いで世界遺産に拡張登録された。