下壁梗塞の心電図で命を救う!St上昇と合併症の急所を徹底解説
下壁梗塞の心電図で命を救う!St上昇と合併症の急所を徹底解説の見逃せないポイントを一挙に解説しました。
ネット上の簡易的な医療解説や初学者の読解において、極めて頻繁に見受けられる致命的な誤解が「V1〜V3誘導のST低下を単なる前壁虚血(狭心症)と決めつけてしまう」という点です。ここには、下壁梗塞と後壁梗塞鑑別の真相が隠されています。
心臓の後壁(背側)には、標準12誘導の電極が1枚も直接貼られていません。そのため、左室後壁が梗塞に陥った場合、心電図には直接的なST上昇ではなく、真向かいに位置する前胸部誘導(V1、V2、V3)に「逆向きの波形」として投影されます。具体的には以下の三徴が揃います。
- 前胸部誘導(V1〜V3)の水平型〜下降型ST低下:後壁におけるST上昇の鏡像。
- V1・V2誘導における幅広く背の高いR波(R/S比 > 1):後壁に生じている壊死の「異常Q波」が、真反対から見て「高いR波」として映し出されたもの。
- V1・V2誘導における陽性T波:後壁の陰性T波(冠T波)の鏡像。
下壁梗塞の心電図を見た際、下壁誘導のST上昇だけに目を奪われ、V1〜V3誘導の深いST低下を「前壁枝の狭窄による狭心症の合併」と誤認してしまうケースは後を絶ちません。しかし実際には、下壁から後壁へと広範囲に虚血が及ぶ巨大梗塞(下後壁梗塞)を捉えている証拠なのです。この盲点を看破するためには、背部に電極を配置する追加誘導(V7・V8・V9)の測定が決め手となります。背部誘導で明瞭なST上昇を確認できれば、後壁梗塞の存在は確定的となり、閉塞血管が左回旋枝や右冠動脈の大型側枝であることを突き止める決定打となります。