死者の声に耳を澄ます法医学者の過酷な現実と知られざる解剖の裏側
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日本における異状死体の解剖率は、諸外国と比べて依然として極めて低い水準にとどまっている。この背景にある最大のボトルネックが、専門医の深刻な人手不足だ。
日本法医学会に所属し、実際に日常的な解剖を担当できる現役の法医学指導医・専門医は全国でわずか150人前後しか存在しない。特定の大学教授が1人で年間数百件に及ぶ解剖を担当している地域も珍しくなく、激務によるバーンアウトや後継者不在による教室の閉鎖が現実の脅威となっている。
さらに深刻なのが地域格差だ。東京23区内のように東京都監察医務院が存在し、行政解剖のインフラが整っている地域がある一方で、地方では変死体の解剖を一握りの大学医学部がほぼボランティア同然の体制で請け負っているケースが多い。警察庁が死因・身元調査法に基づき解剖件数の増加を推進しているものの、それを受け止める法医学側のマンパワーと予算が追いついていないのが実情だ。