なぜ絵を演奏するのか?図形楽譜の読み方と現代音楽の歴史を徹底解読
なぜ絵を演奏するのか?図形楽譜の読み方と現代音楽の歴史を徹底解読とはどのようなものなのか? 詳しい意味を簡潔に解説します。
音符を使わずに図形や絵画で音楽を表現する試みは、唐突な思いつきで始まったわけではありません。20世紀中盤、西洋クラシック音楽の歴史が積み上げてきた記譜システムが、決定的な「表現の飽和状態」を迎えたことに端を発します。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ドビュッシーによる印象主義、シェーンベルクによる無調音楽や十二音技法の登場によって、伝統的な調性感は崩壊しました。さらに第二次世界大戦後、ピエール・ブーレーズやカールハインツ・シュトックハウゼンといった急進的な作曲家たちは、音の高さだけでなく、音の長さ、強弱、アタックの仕方までも極限まで数学的に管理・統制する「トータル・セリー(全音列主義)」を推し進めました。
しかし、厳密さを極めた結果として生まれたのは、演奏家にとって物理的に演奏不可能なほど複雑怪奇になった五線譜でした。1拍を11等分した上に極小の休符と複雑な強弱記号が密集するスコアは、演奏者を過度なプレッシャーで縛り付け、結果として出てくる音響は皮肉にも「偶然鳴らされた音」と聴き分けがつかないカオスに陥ってしまったのです。
こうした閉塞感を打破するために立ち上がったのが、アメリカの実験音楽家ジョン・ケージやモートン・フェルドマン、アール・ブラウンらでした。彼らは「作曲家がすべてを統制する独裁的な関係」を解体しようと試みました。五線譜という厳密なフレームを解体し、音の出るタイミングや高さを大まかな長方形のブロックで示したフェルドマンの『プロジェクション1』(1950年)や、時間軸すら曖昧にしたブラウンの『1952年12月』によって、音楽史に「図形楽譜(グラフィックスコア)」という全く新しい地平が切り拓かれたのです。