なぜロシアは手放した?アラスカ州買収の真相と治安・最新観光を徹底解説

なぜロシアは手放した?アラスカ州買収の真相と治安・最新観光を徹底解説について押さえておきたい 注意点を厳選して解説いたします。

「使い道のない氷の荒野」と呼ばれたアラスカの運命を決定づけたのは、1968年に北極海沿岸プルドーベイで発見された北米最大の巨大油田でした。推定埋蔵量百数十億バレルに達するこの富を本土へ運ぶため、人類工学史上類を見ないメガプロジェクトとして建設されたのがトランスアラスカ石油パイプライン(TAPS)です。

1977年に完成したこのパイプラインは、北極圏プルドーベイから南部の不凍港バルディーズまで、極寒のツンドラ、ブルックス山脈、アラスカ山脈、そして大小800以上の河川を越えて全長約1,287キロメートル(800マイル)を縦断しています。最大の難関は、地下の永久凍土をパイプ内を流れる温かい原油(約50〜60℃)の熱で溶かさないことでした。凍土が融解すると地盤沈下が起き、パイプが決壊して壊滅的な環境汚染を引き起こすため、全行程の半分以上が高床式で地上に浮かせた構造を採用。熱を上空へ逃がすヒートパイプを備えた直立支持具の上に配管を載せるという、当時の最先端土木技術が注ぎ込まれました。

このパイプラインからもたらされた巨額の石油収入は、アラスカ州に世界でも極めて先進的な社会政策を生み出しました。それが1976年に設立されたアラスカ永久基金配当金制度(PFD: Alaska Permanent Fund Dividend)です。州憲法に基づき、鉱物資源ロイヤルティの一定割合を基金に積み立て、その投資運用益を州内に1年以上居住するすべての住民(新生児から高齢者まで)に毎年無条件で直接給付しています。

配当金の支給額は原油価格や市場運用成績によって変動するものの、近年の支給実績では住民1人あたり年間1,000ドルから3,000ドル超に達します。4人家族であれば一過性で1万ドル前後の現金収入となるため、極北地域の過酷な冬季暖房費や生活防衛資金として極めて重要な役割を果たしてきました。ベーシックインカム(無条件基本所得)の先駆的モデルとして世界中の経済学者や社会政策の専門家から研究対象とされる一方、州財政の原油価格依存からの脱却や、支給額の決定を巡る州議会の激しい政治的対立など、制度発足から半世紀近くを経た現在も絶え間ない議論が続いています。

山本 拓海

山本 拓海

ヘルス&ウェルネスアドバイザー

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest