電車の人身事故で損害賠償はいくら?億単位の噂と遺族の支払い義務を検証
電車の人身事故で損害賠償はいくら?億単位の噂と遺族の支払い義務を検証の具体的な内容に迫る! わかりやすい言葉でご紹介しています。
電車の人身事故で本人が死亡した場合、遺族には自動的に支払い義務が発生するのでしょうか。法律上の基本原則から言えば、成人が起こした不法行為の損害賠償義務は、親や配偶者であっても肩代わりする義務はありません。近代法の大原則である「個人責任の原則」に基づき、成人した家族の責任を親族が法的に背負う謂れはないのです。
法的な落とし穴は「相続」にあります。加害者が死亡すると、その瞬間にプラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、鉄道会社に対する損害賠償債務という「マイナスの財産」も法定相続人に承継されます。つまり、遺族自身が不法行為を犯したからではなく、「債務を相続したから」請求を受けるという構造です。
この事態を回避する最も確実な法的防壁が、家庭裁判所で行う「相続放棄」(民法915条)です。自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを完了させれば、初めから相続人とならなかったものとみなされ、鉄道会社からの損害賠償請求に応じる義務は1円たりとも発生しません。
本人が奇跡的に一命を取り留めたものの、多額の賠償金を自力で払えない事態に陥った場合はどうなるでしょうか。ここで問題となるのが自己破産における「免責不許可事由」と「非免責債権」(破産法252条、253条)の解釈です。
法律上、「悪意で加えた不法行為」によって生じた損害賠償債務は自己破産をしても免責されません。ここでの「悪意」とは単なる故意ではなく、積極的な加害意図(他人に損害を与えてやろうという害意)を指します。自死を図って線路に進入した場合、本人の主目的は自己の生命を絶つことであり、鉄道会社に財産的損害を与えること自体を企図したわけではないと法曹実務では解釈される傾向が強く、破産手続きによって免責が認められるケースが十分に存在します。